2025-10-16 00:00:53 配信

「記憶を選んで残す」メカニズム解明 PTSDやうつ治療への期待も 理研などのチーム

 理化学研究所などの研究グループは、脳細胞の一部が「強い感情を伴う記憶」を選別し、記憶として定着させる仕組みを持っていることを発見したと発表しました。

 研究グループは、強い感情を伴う体験としてマウスに静電気でショックを与え、脳内の細胞の様子を分析する実験をしました。

 ショックを与えた数日後、マウスを同じ場所に戻して体験を思い出させたところ、ショックを与える前にはほとんど見られなかった「アストロサイト」という細胞の活動が観察されたということです。

 「アストロサイト」の機能を抑制すると静電気でショックを受けた記憶が不安定になり、強化した際は記憶を思い起こすたび安定していく様子も見られました。

 これらの結果から、「アストロサイト」は記憶の安定性を調整できる細胞で、どの記憶を選んで残すかといった、記憶の本質に迫る役割を果たしていることが示されたということです。

 研究グループの長井淳さんは、「アストロサイトは記憶を選んで残す心の付箋(ふせん)」と話していて、今後はうれしい思い出など日常的な記憶の選別についても研究を進めたいとしています。

 この研究は、記憶の仕組みへの理解を深めるだけでなく、PTSD=心的外傷後ストレス障害やうつなどの精神疾患の治療にもつながると期待されています。

 研究成果は科学誌「Nature」のオンライン版に掲載されます。

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