2025-07-06 22:41:32 配信
【大型減税法が成立】トランプ氏が署名“執念の説得工作”マスク氏との対立は再燃

振り返ると米下院は7月3日、トランプ大統領が推進する大型減税法案の採決を行い、賛成218票、反対214票という極めて僅差で可決された。共和党内からは2人の造反者が出た。前日2日の採決に必要な手続上の投票では、賛成182、反対206、棄権44と、法案の行方に暗雲が垂れ込めていた。こうした情勢の中、トランプ大統領は「何を待っているんだ? 何を証明しようとしている? MAGA(米国を再び偉大に)運動は満足していない。票を失うことになる!」と、採決直前に自らのSNSで共和党議員団に警告を発した。トランプ氏は7月2日午前5時より電話による説得工作を開始し、翌3日午前1時に至るまで、約20時間にわたり断続的に下院議員およびスタッフに連絡を取り続けた。説得の過程では、「予備選での対立候補の支援を辞さない」といった圧力を匂わせつつ、党内の造反を未然に抑え込む強硬な説得作業を展開していた。この執念の交渉により、法案はついに下院を通過。大統領自身の影響力が依然として共和党内で絶対的であることを、改めて内外に印象付ける結果となった。トランプ政権の1期目にホワイトハウス報道官を務めたショーン・スパイサー氏は、「就任から半年が経ち、はっきりしてきたことがある。ドナルド・トランプには逆らってはならない」と語った。
こうして、トランプ大統領が推進してきた大型減税法案が7月3日、ついに連邦議会を通過し、成立した。だが、低所得者層にとって不可欠な医療制度「メディケイド」には、支出削減を含む大幅な見直しが盛り込まれており、共和党にとって重大な政治的リスクを抱える内容と指摘されている。大型減税法に盛り込まれた医療制度改革では、メディケイドの就労要件の厳格化に加え、受給資格の確認を年2回に増やす措置が明記された。これにより、全米で7100万人を超えるメディケイド受給者のうち、約1200万人が医療保険を失う可能性があるとする試算も出ている。特に注目されるのは、受給者の多くが集中する選挙区。7月1日の米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、メディケイド依存度の高い下院選挙区は145に上り、これは全選挙区の約3分の1に相当する。また、所得水準が最も低い56選挙区は、共和党の地盤と重なっており、制度変更による有権者の反発が、来年に控える中間選挙における与党共和党の足元を揺るがしかねない。医療制度改革の実施時期について、米CNNは7月3日、減税は早期に施行される一方、メディケイドに対する大幅な変更は、中間選挙終了後に先送りされる見通しだと報じた。大統領自身の発言との齟齬も浮上している。トランプ氏は3月10日、「私は社会保障、メディケア、メディケイドには手を出すつもりはない」と明言していたが、7月2日には、「メディケイドなどは削減されない。無駄と詐欺乱用の排除によって強化される」とトーンを変えている。
一方、トランプ大統領と実業家イーロン・マスク氏との確執が再び表面化している。連邦議会に提出された巨額の歳出を伴う新たな法案について、マスク氏は6月30日、自身のXにおいて、「この馬鹿げた支出法案を見れば、我々が無能政党による一党独裁国家に生きていることは明らかだ」と痛烈に批判した。トランプ氏は即座に反応。6月30日、自身のSNSで、「イーロンは歴史上、誰よりも多くの補助金を受けているかもしれない。補助金がなければ彼はおそらく店を閉めて、南アフリカに帰らざるを得ない」と攻撃した。さらに、トランプ氏は7月1日、「国外追放の検討は?」との質問に対し、「わからない。検討する必要がある」と応じた上で、「政府効率化省(DOGE)をイーロンにぶつけなければならないかもしれない」と揶揄するような発言を繰り出した。これに対し、マスク氏は7月1日に再びXを更新。「反論したい誘惑にかられている。本当に。本当に。でも今は我慢する」と不快感をにじませた。また、6月30日の投稿では、マスク氏は、「このバカげた法案が可決されれば、翌日にも『アメリカ党』が結成されるだろう」と、新党構想を示唆する発言も行っている。マスク氏はさらに、「2大政党制からの独立を望むか、自問自答する絶好の機会です」と呼びかけ、X上で「アメリカ党を創設すべきか」というアンケートを実施。そして5日、マスク氏はXで「アメリカ党」を結成したと発表した。2026年の中間選挙に向けて、トランプ大統領に対抗する政治勢力を築く可能性もある。
★ゲスト:ジョセフ・クラフト(経済・政治アナリスト)、小谷哲男(明海大学教授)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
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