2025-06-07 22:30:55 配信

備蓄米効果?コメの価格に異変 業者も驚き「正直こんな経験ない」

随意契約による備蓄米の販売開始から1週間。コメの価格が動き出しました。一方、小泉農水大臣から飛び出した「コメの緊急輸入」の言及に対しては、農家から戸惑いの声も…。(6月7日OA「サタデーステーション」)

■スポット取引価格急落 店頭価格下がる可能性も

7日も各地で、備蓄米の店頭販売が始まりました。岐阜県のスーパーでは、用意していた550袋分の整理券が、およそ30分で終了。

備蓄米を購入した人
「朝4時半です。年金暮らしなので、極力安いモノを」

備蓄米を購入した人
「いま高いですから、ちょっとでも安く手に入ったらいいなと」

都内のスーパーでは、税込みでも1998円。2000円を切りました。

備蓄米を購入した親子
「2000円。嬉しいですよね、正直。まさか買えると思っていなかったので」

また、福岡市のディスカウントストアでも人だかりが。こちらでも、税込みで5キロ2000円を切りました。

備蓄米を購入した親子
息子「2000円以内でとっても安いから最高っす」
母親「男の子というのもあるし、育ち盛りというのもあるので、結構食べるのですごく助かります」

さらに7日、コメを扱う業者の間に衝撃が走りました。

内田米店 内田幸男社長
「びっくりしました。ちょっと見ないあいだに、(スポット価格が)5千円くらい売り値下げてますね」

コメの価格が急に下がり始めたことに驚くのは、都内の老舗コメ販売店の内田さん。

内田米店 内田幸男社長
「茨城コシヒカリの2等米が、3万5000円でメニューに載っかったのを見て、1日で4000円も下がっちゃうのっていうのは、正直こんな経験というのはあまりなかったです」

そして、サタデーステーションが先月取材した、群馬県のコメ卸業者。

金沢米穀販売 金澤富夫社長(先月24日)
「特に今年、非常にスポット取引も高いですし、高くなったお米の転嫁をダイレクトに我々はお客様にできないので、会社としては粗利率が落ちますし、非常に悪循環に陥っているので」

7日、改めて行ってみると。

金沢米穀販売 金澤富夫社長
「正直、(スポット価格が)いきなり1割落ちたというのはびっくりしましたね。まさに大手スーパーさんなり、コンビニさんなりに備蓄米が出始めた時期と、スポット価格が下がり始めた時期というのは、似通っている時期で(下落が)始まっているので、やはりインパクトが大きかったですね」

共に口にするのは、JAを通さない“スポット取引”によるコメの価格です。スポット取引とは、卸売業者の間で行われる取引のことで、その価格は今後の指標として注目されています。

内田米店 内田幸男社長
「新米が早く出回る千葉・茨城産は、今年の8月に新米が出てくるので、そのあたりのコメを持っている業者は売り急ぐ可能性はあります」

新米が出てしまうと、24年産は古米となり値崩れをしてしまうので、その前に売りさばく必要があり、価格が下がり始めているといいます。9月以降、本格的な収穫が始まる新潟米や秋田米なども値を下げ始めています。店頭では、高い時は5キロ5000円を超えていた銘柄米が、4000円程度まで下がる見込みだといいます。

内田米店 内田幸男社長
「今回の備蓄米以外にも1、2回目の備蓄米も徐々に流れ始めているので、流通量がかなり増えてきている。今年のコメの生産量がかなり伸びそうで、かなりジャブジャブになる可能性があります」

安くなった今のスポット取引価格でコメを仕入れた場合、関東のコシヒカリ5キロはいくらで店頭販売できるのかを計算してもらいました。

「3250円位で5キロ売れますね」

そして、群馬県の卸売業者は。

金沢米穀販売 金澤富夫社長
「今までは売り手市場で、『この値段で買わなかったら売らないよ』という部分が、『これで買ってもらえますか』に変わりつつある」

5日から、大手コンビニの一部店舗でも販売が始まった随意契約の備蓄米。ファミリーマートでは一部店舗で販売を開始。ローソンでも、一部の店舗で販売を始めました。さらに、セブンイレブンは、17日から販売を予定しています。全国であわせて5万店を超える店舗網を持つ、コンビニ大手3社での販売が、本格化しようとしています。

■小泉大臣“コメの緊急輸入”言及に波紋

小泉農水大臣(6日 閣議後会見)
「緊急輸入、こういったことも含めて、あらゆる選択肢を私は持って向かいたい」

小泉大臣は6日、政府備蓄米が尽きた場合、外国産米の緊急輸入も検討していると発言。政府はこれまで、国内生産への影響を考慮し、輸入米の受け入れには慎重でした。農水大臣が言及するのは異例です。

政府の備蓄米は、およそ91万トンありましたが、競争入札で31万トン、随意契約で30万トンと売り出しを決め、残り少ない備蓄米での対応には限界が指摘されていました。

コメどころ新潟で、東京ドーム17個分の田んぼを持つ、コメ農家の西村さん。小泉大臣の発言をどう受け止めたのでしょうか。

グリーンファーム・ナカムラ 西村代表
「そこまでコメが足りないのかなと感じましたし、備蓄米が放出したって言われてますが、隅々まで届いていないから、今度は輸入米で対応しなくてはいけないのかなと」

西村さんは政府に対し、輸入に頼る前に、コメの流通を改善すべきだといいます。

自民党の農林族の重鎮、森山幹事長は7日。

自民党 森山幹事長
「主食であるコメを外国に頼ってはいけないと思います。なんとしても国産で、国民の皆さんに安心していただける農業政策を打ち立てていくということが本当に大事なことだなと思っております」

また、政府はミニマムアクセス米として、毎年およそ77万トンのコメを関税ゼロで輸入しています。そのうち最大10万トンが主食用ですが、
例年9月以降の輸入を前倒しすることも検討しているといいます。

■“コメの民間輸入”急増 高関税でも割安感

一方、ミニマムアクセスの枠外の“民間輸入”はすでに急増しています。「民間輸入」には、1キロあたり341円という、高い関税がかかりますが、今年4月の1か月分だけで、去年1年間の総輸入量の、およそ7倍にも達しています。

大手スーパーのイオンの一部店舗では、6日からアメリカ・カリフォルニア産のカルローズ米の販売を始めました。価格は4キロ税込み2894円で、5キロに換算すると税込みで3618円です。今後、関東や関西などの都市部を中心に、およそ600店舗まで広げる予定です。

サタデーステーションが訪れたのは、食品の輸入業者。倉庫には、輸入されたコメが山積みになっていました。会社では、これまで鶏肉を中心に扱っていましたが、今年3月から、コメの輸入を開始。売上が急速に伸びています。

MYトレーディング 荒井さん
「最初(3月)が200トンから始まって、翌月(4月)が800トン、5月には2000トンと、月を追うごとに大量に輸入の量を増やしてまして、かなり外国産米のニーズが高まっているのも数字にでているのかなと思います」

取り扱う外国産米の多くは、日本のコメに近いアメリカ産のカルローズ米です。

MYトレーディング 荒井さん
「味が安定していたり、価格も一定水準で仕入れられるという点でかなり外食さんのニーズは多いです。国産の玄米を(1俵60キロあたり)3万4千円くらいで仕入れることを考えれば、関税を払ってでも輸入してしまった方が単価としては抑えられます」

しかし、頼みのカルローズ米も値上がりを始めていて、それに代わるベトナム産米の需要も高まっているといいます。取材中にも問い合わせを受ける場面がありました。

MYトレーディング 荒井さん
「国産のお米から海外のお米に切り替えにいっている業者さんからも、かなり多く問い合わせを頂いていますので、その量によっては、これからも(輸入量を)増やしていくと思います」

人気のアメリカ産のカルローズ米ですが、東京・御茶ノ水駅近くのカレー店では。

お客さん
「美味しいです」
(取材ディレクター:このお米、国産米じゃないんです)
「そうなんですか。カレーにはちょっと合うかも」

看板メニューのロースカツカレーは、揚げたてのカツにこだわりのカレー、そしてふっくらとしたご飯が絶妙にマッチ。それで、850円です。

カレー屋ジョニー 加藤店主
「さっと食べてさっと帰るような感じなんで、あんまり値上げは…。できれば1000円以内で抑えたいです。(カルローズ米の値段も)もちろん上がってますね。(5年)前は60キロが1万7000円くらいだったのか、今もう4万円を超えてます。2倍以上です。たまったもんじゃないです」

こうした輸入米の広がりにコメ農家の西村さんは。

グリーンファーム・ナカムラ 西村代表
「輸入米をどんどん消費者が求めるようになると、今度は国内産米がだんだん売れなくなってきて、だんだんまた米価下がってきて、これ以上、また農業を続けていけないと、赤字続きの農家に逆戻りになってしまう。非常に、大変なことだなと思ってます」

農業経営の専門家は、輸入に頼りすぎるのはリスクがあると指摘します。

宮城大学 大泉一貫名誉教授
「世界で今5億トンぐらい生産しているわけですよコメを。それで輸出市場に出てくるのは8%ぐらいです。非常に薄い市場なんです。そうすると貿易に頼る国にとっては結構リスキーではある」

■銘柄米、備蓄米、輸入米…今後の価格は

高島彩キャスター
「銘柄米に備蓄米、輸入米と様々なおコメが入り乱れる状況になっていますが、店頭価格はこの後どうなっていくのでしょうか?」

板倉朋希アナウンサー:
「コメの流通に詳しい流通経済研究所主席研究員・折笠俊輔氏によると、備蓄米に関しては5キロ換算で2000円台の“古古米”と1800円台の“古古古米”は今後もこの程度の価格で推移。そして流通に時間がかかっていた2023年産の“古米”の備蓄米については、落札価格自体が高めだったこともあり、3000円から3500円ほどで、店頭に並ぶのではないかということです。これは、現在スーパーなどに並んでいる輸入米のカリフォルニア米と同じくらいの価格となります。そして気になる銘柄米は、備蓄米が消費者のもとに行きわたるという前提で考えると、市場の安心感も高まり相場が下がってくるはずで、銘柄によって差は出るものの7月に入れば3000円台後半から4000円台前半くらいになるのではないか、ということでした」

高島彩キャスター
「皆さんの好みもそれぞれですし、何にお金を使うかというのもそれぞれですから選択肢が広がったのかなと捉えられますね?」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「消費者にとってはいいことですよね。それから随意契約の備蓄米が市場に出てきたことで全体的にコメ価格そのものが下がってきますから。ただ一方で、生産農家にしてみると、物価が値上がりしている中で、生産コストがかさんで決して楽な状況じゃないですよね。政府はこれまでの生産調整、事実上の減反政策ですが、これを見直す方向で検討に入っているわけなんですけど、消費者だけでなく農家の事情も踏まえ、安定供給と適正価格の両輪をどうバランスよく作っていくかということが問われているところですが、そう簡単な話ではないですよね」

高島彩キャスター
「食の安全保障という意味で考えても日本のコメを守るというのは大事な事ですからね」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「やはり生産農家をどうやって守っていくかということもあるし、食を外国に頼るというのは、いざという時にそれが断たれてしまうというリスクはありますから、どうしても自前でということになると食の安全保障ということになりますが、それが誰にとっての安全保障なのかも、しっかり考えていかなきゃいけないですよね」

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