2025-05-12 01:02:15 配信

先に「停戦」か「交渉」か 正念場の外交駆け引き 待ち受ける制裁にプーチン大統領は

 ロシアとウクライナの停戦への道のりについて、ロシアが戦闘を継続しながら「直接交渉」を始めるよう提案したのに対し、ウクライナと西側諸国が求めているのは「即時停戦」です。双方の駆け引きが続き、突破口は見い出せていません。

■「無条件即時停戦」か「直接交渉」か

 ウクライナと西側諸国は10日、30日間の無条件停戦を提案し、ロシアが応じなければ追加制裁を科す方針を明らかにしました。

 これに対してプーチン大統領は、日をまたいだ11日午前1時すぎにクレムリンで急きょ声明を発表し、「根本的な問題解決が先だ」として無条件での停戦を事実上、拒否しました。

 代わりに2022年に決裂したトルコ・イスタンブールでのウクライナとの直接交渉を再開することを提案しました。

■イスタンブールで交渉する意味 トルコ大統領は協力

 当時の和平案はウクライナを中立化し、国連の常任理事国がウクライナの安全を保障することなどが盛り込まれていました。

 プーチン大統領はウクライナがこの交渉から一方的に離脱したと非難しています。

 プーチン大統領は、交渉は15日からイスタンブールで行うと提案し、エルドアン大統領と電話で会談して全面的な支援を取り付けました。

 ロシア外務省のザハロワ報道官は「プーチン大統領は、まず根本原因について話し合い、その後、停戦について話し合うと明確に述べた」と主張し、停戦よりも交渉が先だとの立場を改めて明確にしました。

■ウクライナと西側諸国は「まず停戦」ありき

 ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアが戦争終結を考えているのは、良い兆候だ」と抑制的に反応しましたが、「本当に終結させるための最初のステップは停戦だ」として、30日間の即時停戦を受け入れるよう、ロシアに求めました。

 欧米各国はプーチン大統領の提案に懐疑的な反応を示しています。

 フランスのマクロン大統領は「交渉は無条件停戦は先行してはならない」「プーチン氏は打開策を探っているが、は時間を稼ぎたいだけだ」と批判。

 さらに「民間人が爆撃されている間、交渉はあり得ない。交渉開始には、今すぐ停戦が必要だ」と訴えました。

 ドイツのメルツ首相も「まず銃声が静まり、それから交渉が始まる」、アメリカのケロッグ特使も「まず30日間の無条件停戦を宣言し、その間に包括的な和平交渉を開始する必要がある。その逆はない」と、交渉より先に無条件停戦を求め、多数の西側諸国の首脳らが同調しています。

■「停戦」なくば…準備されている制裁

 ニューヨークタイムズは、アメリカのトランプ大統領はマクロン大統領らに対して12日までに停戦が成立しない場合、ロシアに制裁を科す用意があると約束したと報じています。

 また、アメリカ上院はロシアから石油や石油製品、天然ガス、ウランを購入する国からの輸入品に500%の関税を課すことを検討しています。

 EU(ヨーロッパ連合)は制裁を回避してロシアの石油を輸送する「影の船団」のリストに150隻の船を追加し、厳しく取り締まる方針です。

■プーチン大統領はどうする?

 クレムリンに近い関係者は「プーチン大統領は追加制裁を避けたがっている」と指摘していて、今後、アメリカが追加制裁に踏み切るのかが交渉の行方を左右します。

 プーチン大統領は即時停戦の提案を受け入れることも公然と拒否することも避けながら、戦闘行為を続けていくとみられます。

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