あの日は午前中から入道雲が立ちのぼる暑い１日でした。

当時大学生だった私は、アルバイト先へ向かうため路線バスに乗車。車内には大きな鞄を持った１０人ほどの野球部員が乗っていました。

次の停留所で部員たちは降車。するとバスの運転手がこんなアナウンスを始めました。

「この子達は今から夏の高校野球の試合に向かいます。拍手で見送ってあげて下さい。」静かだった車内は一転、拍手で包まれ、「がんばれよ」という声も飛んでいました。

部員たちは照れながらも、走り出すバスに向かい手を振っていました。翌日、新聞で試合結果を見ると、その高校は１回戦敗退。しかし強豪校相手に善戦していました。

運転手の言葉が乗客を動かし、選手たちを後押ししたかもしれない。

当時アナウンサーを目指していた私は改めて「言葉の力」を感じたのでした。

あれから１５年。私は一言一言を大切にできているだろうか………。入道雲を見上げながら原点を問う夏の日々です。