【特集】ジビエ肉が会津のブランドに?「命を無駄にしない」西会津町で新たな挑戦
2026/10/6 14:302026年も県内で相次ぐクマの出没。
目撃件数は2025年の倍以上に増え、8月末時点で7件10人が被害にあっています。
私たちの生活を脅かす有害鳥獣。
様々な理由で有害鳥獣の数が増えている中、駆除するだけではなくその命を有効活用しようと、西会津町で新たな挑戦が始まりました。
9月上旬、西会津町にある「同気食堂」。
この店で作られているのが…。
いわゆる野生鳥獣の「ジビエ肉」を使ったメニュー。
イノシシとクマの肉を使った「イノクマ焼肉定食」と「イノクマ鍋定食」は、2026年2月から新たに提供が始まりました。
そのお味は・・・
【佐野楓記者】
「イノシシとクマの焼肉定食ということで、硬そうなお肉のイメージがあったんですけれども、そういった硬さもなく、臭みもなく、とても美味しいなと思いました」
1921年に創業し、間もなく105周年を迎える同気食堂。
町の人々から長年愛されてきた老舗を切り盛りするのは、4代目店主の氏家待子さん(68)です。
【氏家待子さん】
「(ジビエ肉は)しゃぶしゃぶ用みたいな感じで全部スライスして。はっきりした味付けの方が美味しく感じられる」
ジビエ肉の定食は、長い歴史でも初の試みです。
なぜ、ジビエ肉の提供を始めたのでしょうか?
【氏家待子さん】
「クマとかイノシシとかいっぱい出てるから、それを無駄にしないように、町の方でジビエを使った何かをできないかな、という感じで進んできて、じゃあうちがとりあえずそれをやってみる?というふうになった」
山に囲まれた西会津町。
実はいま、ジビエ肉を新たな地域のブランドにしようと、町を挙げてその利活用を検討しています。
この取り組みをPRするために、氏家さんも店でジビエ肉の定食を始めました。
実際に定食を頼んだ人は…。
【喜多方市から】
「イノクマ焼肉定食(を注文した)。クマ肉、全然癖がなくて美味しかったです。言われないと(ジビエ肉だと)分からないくらい」
【氏家待子さん】
「(ジビエ肉が)地元で出来れば単価が抑えられるかもしれないけども、地元のクマやイノシシはまだ風評被害で使えない状態なので」
店で使っている肉は、実はすべて他県産のもの。
県産のジビエ肉は使うことができません。
背景にあるのが、2011年の福島第一原発事故です。
【佐野楓記者】
「原発事故から15年が経った今も、県内では森林の多くで除染が進んでいません。除染されていない山で木の実や昆虫などを食べる野生鳥獣は、体内に放射性物質を取り込みやすいことから、県内全域で出荷が厳しく制限されてきました」
農家の高齢化による離農や耕作放棄地の増加に、ハンターの人手不足などが重なり、有害鳥獣の出没や農作物の被害は増加。
駆除の必要性は増す一方で、クマやイノシシ、シカなどは捕獲しても、食べることも売ることもできない状況が続いています。
さらに…。
【西会津町農林振興課ジビエ担当・古川祐樹さん】
「原発事故の影響で出荷制限が福島県は課せられているということで、捕獲した個体は埋設するか焼却するしかないということで」
西会津町では、2025年だけで90頭のクマが捕獲されました。
しかし、そのすべてが土に埋められるか、焼却処分に…。
動物たちの命を何も活かせず、狩猟者の負担にもなる現状がありました。
こうした問題と向き合おうと、町で始まったのがジビエ肉の利活用を考える取り組みです。
町の農林振興課には、2026年4月からジビエ肉の利活用に専属で取り組む職員を3人配置。
そして現在計画しているのが、ジビエ肉に特化した処理加工施設の建設です。
施設では、西会津町を含めた周辺5市町村で捕獲された野生動物の全頭検査を行い、放射性物質が体内に含まれているかを確認。
その上で、安全性が確保されれば、この施設の検査を通過したジビエ肉に関しては出荷することができる「出荷制限の一部解除」を目指すとしています。
【西会津町農林振興課ジビエ担当・古川祐樹さん】
「せっかく捕獲した個体を処分するだけではなくて、しっかりそれを利活用していきたいというような気持ちで、町の方では事業を進めております」
また町は、取り組みを官民共同で進めるために、2025年の秋にはジビエ肉の利活用を検討する会を立ち上げました。
【西会津町農林振興課ジビエ担当・古川祐樹さん】
「全国的に見ますと、クマを多く扱う施設というものが少ないということで、これは西会津町や会津地域でジビエの一つの目玉になるかなと」
「会津北部のジビエ、もしくは会津ジビエとして広域的なブランドを立ち上げて、全国に発信できればなというふうに考えております」
8月末の検討会では、処理加工施設の具体的な事業が報告され、町と参加者の意見交換が行われました。
【参加者】
「捕獲するクマの生態数を守る仕組みっていうか、だんだん減った場合について決めていることはあるんでしょうか」
「クマがこの豊かな生態系を作るための木の実を運ぶ役割とか、自然が豊かな西会津の一番大事なところにいると思うんですけど」
【西会津町 農林振興課 小瀧武彦課長】
「一定程度、人間の生活に影響を及ぼすような個体については、それぞれの都道府県などで捕獲の計画を立てた上で、計画の範囲内で捕獲ができるという仕組みになっておりますので。そういった県内の計画に基づいて必要以上に捕るということではなくて、国や県の方針で捕獲を進めていきたいと思います」
その後、施設で実際に作る加工品をイメージして、職員が作ったクマ肉のソーセージが振舞われました。
動物たちの限りある命と、その命をいただいて生きる、人間の営み。
【西会津町猟友会・西田春喜会長】
「昔だったら捕ったものに手を合わせてから食べていたわけですしね。感謝していたわけなんですけど、今はもう雑というか、食べられないから。ゴミですもんね」
「一番いいことだと思います。活用していただければね」
【氏家待子さん】
「土に埋めちゃうのはもったいないし、普段、豚とか牛とかと同じような感覚でジビエも浸透していったら、とってもみんなが元気になっていいと思います」
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