【卓上の格闘技】アームレスリング世界選手権 出場選手に密着【約20年ぶり日本開催】
2026/9/30 11:00
「卓上の格闘技」とも呼ばれるアームレスリング。
一瞬で勝負が決まることもあれば、数分に及ぶ持久戦になることも。
先週、その世界大会が、約20年ぶりに日本で開催されました。
【内田智之アナウンサー】
「会場には様々な国や地域の言葉が飛び交っています。世界各地の腕自慢たちが、ここ茨城に集結しました」
この大会に、県内から日本代表として挑んだ選手も…。
世界一をかけた戦いに密着しました。
本宮市にある、闘腕・川上塾。
およそ20人の選手が、日々、腕を磨いています。
このジムから、初めて世界大会に挑む選手もいます。
その1人。
高原樹美(たかはらじゅみ)さん・17歳。
細身で、一見、アームレスリングとは結びつかないようにも見えますが―
2026年、ジュニアの全国大会で優勝。
初めて世界選手権への切符をつかみました。
高原さんは普段、天栄村の道の駅で働いています。
【高原樹美さん】
「レジとかアイスクリーム作ったりとか、袋詰めとかやってますね」
控えめで、真面目な性格だという高原さん。
【道の駅 季の里天栄 五十嵐論子 駅長】
「おっとしりしていて、みんなで可愛がっています」
「(アームレスリングのことは)中学生のころから聞いていて、腕とか見ると半袖だとムキムキで硬いです」
勤務後は、村内にあるジムへ直行。
およそ2時間トレーニングに励みます。
アームレスリングと聞くと、腕の力が重要だと思いがちですが、実は手首や背中の力が、勝負を左右するといいます。
【高原樹美さん】
「他はキープした状態で、手首だけ(動かす)感じですね」
Q.何㎏くらいあげるのか?
「60から始めて出来れば100までやる感じでやってます」
しかし、なぜ、高原さんは、アームレスリングに打ち込むことになったのでしょうか。
【高原樹美さん】
「私が小学校4年の時に、父がアームレスリングを始めて、中学2年生ぐらいに本気でやってみたいと思って始めた感じ」
父の姿を見て、自然と競技を始めるようになったという高原さん。
今も、週に1度・親子でアームレスリングの道場に通っています。
【父・宏樹さん】
「(片道)1時間くらいですかね」
「ここまで続くとは思ってなかったですね」
そんな高原さんの最大の武器が、粘り強さです。
【闘腕川上塾 川上健太 塾長】
「親指。相手に倒されない親指の強さがあるので、そこに背中が入ってくることによって、上から叩けると」
そして、父・宏樹さんの存在も、高原さんの大きな強みとなっています。
【高原樹美さん】
「家にかえって反省をする時に、父に組んでもらって、どういう所がダメだったとか言ってもらったりしている。
Q.仲が良いですよね?
「そうですね。結構」
そして、世界に挑むもう1人の選手が、黒木マーカスさんです。
これまで、全国大会に8度出場。
日本を代表する選手の1人です。
双葉町出身で消防士をしている黒木さん。
東日本大震災の発生直後は、被災地で救助活動にあたりました。
高校時代はハンマー投げで県のチャンピオンに輝くなど、パワーには定評があった黒木さん。
上司に勧められ、アームレスリングを始めますが、思いがけない現実に直面することになります。
【黒木マーカスさん】
「自分は最初、川上君にも勝てなかったので、ジムの中で一番弱いレベルから始まって」
体格も小さく、年齢も下の選手に敗北。
パワーだけでなく、細かな技術が勝負を左右するアームレスリングの奥深さにひかれ、競技にのめり込んでいきました。
アームレスリングには、小指側から巻き込む「噛み手」と、親指側から巻き込む「吊り手」の2種類の攻撃パターンがあります。
しかし…黒木さんは…
【黒木マーカスさん】
「どっちでもない中間で、どっちでも対応できるような形でやっている」
なんと、相手に合わせて、どちらにも対応できる万能型。
数多くの選手と対戦する中で磨いたこの技術に、持ち前のパワーが加わり、日本を代表する選手へと成長しました。
【闘腕川上塾 川上健太 塾長】
「単なるパワーだけではなくて、もう体ごと引かれる感じなので、今月の世界大会は負けないと思います」
世界選手権には、30あまりの国と地域から500人を超えるトップレスラーが出場。
2人も日本代表のユニフォームに身を包み、決戦の会場に入りました。
【高原樹美さん】
「緊張してますけど、全力で頑張ります」
【黒木マーカスさん】
「良い緊張感をもって試合に臨めたらなと思う」
大会は、「ダブルエリミネーション」と呼ばれるトーナメント方式で行われます。
一度負けても敗者復活戦に回ることができ、2敗した時点で敗退となります。
黒木さんのカテゴリーには8人がエントリー。
100キロを超える猛者たちが集う重量級の戦いです。
初戦の相手は、20年近く第一線で活躍するカナダのベテラン選手です。
危なげなく勝利。
初めて挑む世界の舞台で、幸先のいいスタートを切りました。
そして迎えた2戦目。
黒木さんの前に立ちはだかったのは、前回大会のチャンピオンでした。
世界王者を前に初黒星。
一敗し、あとがなくなりました。
【黒木マーカスさん】
「経験したことがない指の強さを感じたので」
「全体でしっかり固めて自分の体重を使って倒していければと思う」
敗者復活から再び勝ち上がります。
強敵ぞろいのこのカテゴリー。
相手は、世界選手権3位の実績を持つハンガリーの選手です。
黒木選手は5位。
決勝進出を果たすことはできませんでした。
【黒木マーカスさん】
「改めて世界のレベルの高さを知れたので、自分にとって今後強くなるためのモチベーションというか上がったので、すごく勉強になった世界大会だったかなと思います」
一方。
高原さんの部門には、6人がエントリー。
待ち受けるのは、去年の世界選手権銀メダリストです。
相手にファウルがあり、高原さんが判定勝ち。
世界選手権の初戦を白星で飾りました。
【父・宏樹さん】
「相手の肘がパッドから離れて、ファウルという形で勝ったと思う」
息つく間もなく次の一戦へ。
立ちはだかったのは、去年の世界選手権の女王・ブルガリアの選手です。
しかし…
1敗を喫し、後がない状況に追い込まれます。
敗者復活戦。
父・宏樹さんのアドバイスを受け、気持ちを切り替え、再び舞台に上がります。
勝てば決勝進出が決まる大事な一戦。
敗者復活戦を勝ち抜き、見事・決勝進出を決めました。
決勝の相手は、先ほど敗れた前・世界女王。
【高原樹美さん】
「リーチ(前腕)が長いから、最初から(腕を)上にあげられるから、自分も合わせないといけない」課題は、長い腕をもつ相手への対応。
そこに声をかけたのが、同じジムに所属する黒木さんです。
【高原樹美さん】
「(相手の)腕が長いから上に来る感じがするんですよ」
【黒木マーカスさん】
「パッドの先で構えると高さが出る」
【高原樹美さん】
「前の方に肘を置いて戦えと(アドバイスされた)」
肘をパッドの前方に置くことで、握る拳の位置を高くし、相手のリーチに合わせる―。
仲間からのアドバイスを受け、最後の戦いに向かいます。
父、そして仲間の言葉を胸に――。
世界一の称号をかけた、決勝の舞台です。
あと一歩、届かず2位。
それでも、初めて挑んだ世界の舞台で銀メダルを獲得しました。
【高原樹美さん】
Q.嬉しい悔しいどちらですか?
「悔しいですね。相手との力の差を感じてまだまだだなと」
【父・宏樹さん】
「努力しているので、結果がついてきているのかなと思う」
「(今後も)頑張ってほしい」
しかし全ての戦いを終え、悔しい気持ちが溢れました。
悔しさも、次の強さへ。
世界一を目指す挑戦はこれからも続きます。







