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アナウンサーブログ

2023-03-11

12年

階段を上ると、小高い場所に広場がある。

 

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東日本大震災から10年が経つ時に整備された南相馬市メモリアルパークだ。

 

津波で甚大な被害を受けた北泉海岸の近くにあり、

絶え間なく波音が聞こえてくる。

 

 

記念碑には、

南相馬市の犠牲者のうち、遺族の同意が得られた807人分の名前が刻まれている。

 

一人ひとりの名前をなぞっていくと、

同じ名字が何人も並んでいることに気づく。

 

家族や親せきが何人も命を落としたことが容易に想像できる。

 

 

当時、津波はこの辺りで11・1メートルの高さまで押し寄せたという。

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この高さの津波を肉眼で見た人たちは

どんな恐怖に駆られたことだろう。

 

 

 

今回初めて、責任者として生放送の震災特別番組を担当することになった。

メモリアルパークから全編生中継することに決めて

この地を訪れた。

 

目の前には、震災後に造り直された防潮堤が見える。

7・2メートルと巨大で、震災当時よりも1メートル高く造られているが、

当時押し寄せた津波は、この堤防でも防ぐことは出来ない。

 

いかに自然の力が強大で、

人の力で防ぐことが困難かということが分かる。

 

 

「津波からは、逃げること」

 

 

震災を知らない世代が増える中で、

いつかこうした教訓が途絶えてしまう日が来るのだろうか。

 

 

 

 

番組の内容を考えている時に、

県外の人からは

「震災や原発事故で苦しんでいるという話はもういいんじゃないか」と言われた。

 

12年という時間は

風化するには十分すぎる時間なのかもしれない。

 

一方で、

今も大切な人の死と向き合えない人もいる。

 

12年は短すぎるのかもしれない。

 

 

全ての人に平等なはずの時間の流れは、

震災と原発事故発生後に

その性質を変えてしまったのだろうか。

 

 

当時から知っている人たちに会うと、

少しずつ白髪が増えてきている。

杖をつくようになった人もいる。

 

 

今だからこそ伝えなければならない当時の記憶がある。

 

 

そう思い直して、番組の最後に放送するVTRの中身を変更することにした。

 

 

テレビを観た人たちが、

子どもたちと当時のことについて話し合えるように。

 

 

教訓が未来につながるように。

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