安藤桂子のアン・ドゥ・トロワ

記録と記憶

2020.11.14

カーナビに住所を入れて車で向かうと、

何度も「この先通行止め」の看板に行く手をふさがれた。

原発事故による避難指示の解除が進む中でも

双葉郡には今も帰還困難区域のために通ることができない道がある。

そのことを改めて認識させられた。

先日、休みを利用して訪れたのは

今年9月に開館した「東日本大震災・原子力災害伝承館」

双葉町に建てられた県の施設で、

震災と原発事故の記録と記憶を伝える役割を担っている。

特に原発事故により

刻一刻と変わる状況の中で慌ただしく避難せざるを得なかった様子が

被災者の声やホワイトボードに書かれた情報などから浮かび上がる。

被災地の街並みが時を経て変わりゆく中で、

当時の記憶と記憶を残すことは非常に大切だ。

それは、戦争を始め世界の負の遺産を例に見れば

想像に難くない。

一方で、

福島は今も復興に向けて歩みを進めている最中であり、

この伝承館もその歩みと同じように発展途上なのだろうと感じるところが多々あった。

例えば、館内で流れる映像に英語字幕が付いていなかったこともその一つ。

今後、国内はもとより

世界中からFUKUSHIMAの教訓を得ようと人が訪れるようになるだろうが、

何を話しているのか分からなければどうしようもない。

これから多くの人が様々な視点でこの施設を訪れることで、

足りない点が見つかっていくだろう。

私は、この10年被災地で見たり出会ったりしてきた人や物の温度感が

なかなかこの施設で表現しきれておらず、

震災と原発事故をどこか遠い過去のことのように感じさせてしまう懸念を抱いた。

それでも、福島第一原発の近くで津波の被害を受けたこの地域に、

こうした施設が出来たことが意義深いことに変わりはない。

館内をゆっくりと見て回った。

どのくらいの時間が経っていただろう。

外に出ると、雲一つない青空から日差しが照り付けていた。

安藤桂子のアン・ドゥ・トロワ|アナウンサーブログ

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