一晩だけの擬似家族
多分、
家族なったつもりで過ごしてみるのがいいかもしれない。
擬似家族。
この場合、「演じる」のではなく「なりきる」のが正しい。
週末、喜多方市の農家民宿を訪れた。
迎えてくれたのは、お父さん、お母さん、息子さんにお嫁さん。
そして、その小さな子供たち2人。
6人家族に交えてもらう私は、
さながら一晩限定の7人目の家族だ。
「こづゆの作り方、教えて欲しいんです。」
私の申し出に、汚いからあんまり見ないでねと言いながら、
その家の聖地(少なくとも私はそう思っている)、
台所に通してくれた。
「お嫁に来た頃は、この家ではこづゆに大根を入れていたのよ。」
そんな話に耳を傾けながら
椎茸・ニンジンを刻み、貝柱とキクラゲを割く私。
「でも、何だか私、馴染めなくて、大根入れるのやめちゃったの。」
おたまを泳がしながら笑うお母さん。
伝統料理も時とともに少しずつ形を変えるらしい。
1時間ほどで、熱々の会津の味が出来上がった。
採れたての野菜の天ぷらに浅漬け、煮物に、サラダ、
つやつやの炊きたてごはん(お邪魔したのは稲作農家でした)。
そして、一緒に作ったこづゆが食卓を彩る。
田舎の農家ならではの広い居間に、家族と擬似家族。
会津の文化やラーメンの話、農業のこと、話に花が咲いた。
その家の台所に立ち、
その家の味噌汁をすする。
その家の洗面所を使い、
その家の枕に頭をあずける。
つまり、その家に流れる空気と水と日常に身を溶け込ませる。
農家民宿って、やっぱり疑似家族体験かも…。
夜、そんなことを思って、うとうとと眠りについた。
翌朝、別れ際。
「いつでもまたおいで」と、はにかむお父さん。
「こんなのでよければ、また是非」と、控えめなお母さん。
そして、
振り返るごとに大きく左右に揺れる、何本ものバイバイの手。
たった一晩なのに、「擬似」が取れたような気がした。
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