おと・な・り
あるカメラマンが言った。
「目で撮るんじゃないよ、耳で撮るんだよ」
そしてあるシェフの著書にはこんな言葉が。
「一流の料理人は耳で料理する」
どうやら
カメラマンは耳をそばだて
ファインダー越しに対象物の次の動きを読み、
料理人は、微妙な音の変化で
火加減や調理のタイミングを計るらしい。
視覚主導に思える職業につく2人の
矛盾しているような言葉に、妙に感じ入る。
音から想像し、
音から見えてくるものもあるんだ…と。
で、話は週末に観た「おと・な・り」だ。
これが胸がほわりと温かくなる映画だった。
顔も知らない隣人の音を
アパートの壁越しに感じながら生活する男女。
コーヒーを挽く音
くしゃみをする音
楽しげに口ずさむ音が響く。
次第にお互いが気になって、やがて…。
映画のサブタイトルは、
「初めて好きになったのは、あなたの生きている音でした」。
相手の部屋から伝わる音を通じて、ひかれ合う姿を描く。
御免こうむりたいシチュエーションに
ありえない偶然が重なる。
そんな出来すぎの展開も
穏やかで優しい雰囲気によって、一枚ベールをかけたように
白透明のおとぎ話に仕立て上げられている。
そうか。
耳で撮り、
耳で料理し、
耳で恋することもできるんだ。
パンフレットを胸に抱え、映画館から出たら
聴覚が、いつもより研ぎ澄まされている気がした。
そして、綿棒を買わなくちゃと思った。
さすらいのタマネギさん2009年08月12日 22:52
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